アニメが変わるべきこと、変わってはいけないこと。

「アニメ業界はブラックだ」

この言葉はネットサーフィンを見ていれば誰しもが一度は目にしたことがあるはずだ。SNS等でも一度検索すれば、

当たり前のように業界のブラックさを指摘し、第三者側から見たら絶句するようなエピソードが次々と出てくる。

 

このようにあまりにもネガティブな話題が多いことから、それを別のカテゴリーと混合して批判する意見も決して少なくない。

 

そこで今回は、アニメ業界だけではなく、そこに付随する産業にも言及した上でアニメ全体の良いところと悪いところを語りたいと思う。

 

 

  • アニメが変わらなければならないこと
  1. 現場労働者に適正な賃金を払うこと

 

 jaicaの2015年調査報告pdfによると、

 

  2013 年の年間収入(税込)は
平均 332.8 万円となっている。国税庁長官官房企画課(2014)『平成 25 年分
民間給与実態統計調査 調査結果報告』によると、民間の事業所に勤務している給与所得者の 1 人あたりの平均給与(2013 年)は  414 万円となっており、

アニメーション制作者の年間給与は全国平均値と比べると、約 81 万円低い。

階層別では、「150 万円超 200 万円以下」と「250 万円超 300 万円以下」がいずれも 12.4%と最も多く、

次いで、

「350 万円超 400 万円以下」が 10.7%、「200 万円超 250 万円以下」が 10.2%、「100 万円以下」が 8.2%と続く。

 

 

 

表 5-4-1 仕事上で自己負担になっているものの年間支出額
(Q16b, 数字で記入, 単位:万円)
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また、この給料の平均的な低さが、家族を作る、子供を作るという、次のステップにアニメの制作作業全般では、叶わぬ夢となりつつあるというのも、今のサービス業全体に通ずる問題でもある。

 

婚姻状況は、「配偶者なし(未婚)」が 71.5%と最も多く、「既婚」が 25.3%、「配偶者なし(離婚・死別)」が 2.5%となっている。
子どもの有無は、「子どもなし」が 84.6%に対して、「子どもあり」が 13.6%と少ない。
同居家族の人数(回答者を含む)は、「1 人」が最も多く 55.5%、次いで「2 人」が 19.0%、
「3 人」が 11.6%、「4 人」が 9.6%と続く。
家庭での主たる生計維持者は、「本人」が 67.7%、「本人以外」が 11.3%、「その他(生計費は折半等)」が 20.3%である。
住居は、「賃貸マンション」が最も多く 40.2%、次いで「民間アパート・間借り」が 27.8%であり、両者を合わせると 68.0%となっている

 2.制作現場のスケジュールを整理すること

これは、実は賃金の次に大切なことだと個人的には思っている。視聴者には総集編といった目に見えることが無い限りほとんど取り上げられないが、委託契約の作画マンが多いために、制作会社は会社スケジュールを作画マンに徹底できないのだ。

 

このような個人個人の仕事スピードにバラツキがある問題の解決法として正社員雇用をするべきだという意見もあるが個人的にはあまり賛成できない。その理由は後で述べる。

 

 3.製作委員会の改善

ここで"廃止"ではなく"改善"としているのは製作委員会にはリスクヘッジという重要な役割があるからだ。

製作委員会方式

 https://ja.wikipedia.org/wiki/製作委員会方式?wprov=sfla1

 

ここで言いたい改善は、製作委員会内部の出資額による発言力の格差を無くすべきだということだ。制作会社は資金面では決してトップには立てないために、現場側の意見よりも

放送側の意見がより尊重される傾向にある。

廃止することに反対なのは、製作委員会が仕事を確保する側面もあるからだ。

例として、数年前にニュースでも話題になったJA全中の指導権が廃止されたが、結局全中は廃止されなかった。

なので、製作委員会の指導権の廃止というのが理想ではないかと思っている。

 

 

 4.アニメ製作作業の効率化

数日前の、クローズアップ現代のアニメ業界の特集の時に、この事を明確化したときに、

SNS上では、業界の問題から目を反らしているという批判が多く出ていた。

実は、この問題自体は明確に存在しており、

決してクローズアップ現代はアニメ業界の問題から目を反らしていたわけではない。

只、問題の優先度として、基本的な賃金問題が解決していない一方での効率化は順序が正反対だということだ。しかも、場合によっては、制作会社の立場をより弱くしてしまう危険性も孕んでいるために、この問題は、賃金問題が解決してから手をつけるべきでは無いだろうか。

 

参考までに、

【Janica 調査報告調査書 2015】

https://drive.google.com/file/d/0B_9MUzV4sG4SWEdpdE9ZOHJpWXM/view?usp=drivesdk

涙でそう....( ;∀;)

 

  • アニメが変わってはいけないこと
  1. 多様化や細分化を維持する。

これに反対する人なのは多いことを承知の上で、この意見を言いたい。

現在は、1シーズン当たりにアニメが数十本が放送されているという状態だ。

毎日のテレビ欄には必ずアニメアワーと呼ぶような、アニメがまとまっている

この本数の多さが現場の人間を苦しめているのは紛れもない事実だ。だがここまで本数が増え、誰しもが好きなアニメを必ず持っているというのは、アニメが多様化した紛れもない成果だ。細分化したために一つ当たりのアニメの注目度が下がったという意見は紛れもなく正しいが、それはあくまでも日本国内需要に限定している。世界的には、海外も成長コンテンツとしてアニメを指摘している通り、海外需要はまだ延びる余地がある。

 

【ナイジェリアでアニメを】

 

   2.雇用形態を維持する

これは先の問題と矛盾するのではないかという指摘があるかもしれない。

 だが、正社員の場合、他の会社の仕事を受けることができないというリスクがある。

アニメの制作にはクリエイター(技術者)が多く必要だ。だが、今の日本では少子化が進みつつあり、無尽蔵の人的資源は期待することが出来なくなった。絵が上達するには時間がかかるために誰でもいいというわけには行かない。

そこで、上の4の部分で指摘していた作業の効率化ツールと組み合わせ、制作者の仕事の選択肢を確保しておくことが大切だ。

よく誤解されるが、非正社員雇用自体が悪いのではない。問題は、賃金をはじめとした格差が明確にされていることだ。

そうすることで制作者はお金を多く得るためにたくさん働くという選択肢もとれるし、自分のプライベートも確保する選択肢も取ることができるのだ。

 

  • 最後に......

良いところ、悪いところをそれぞれ上げてきたが、全てはアニメーターの賃金問題に収束している。

入江監督はクローズアップ現代に出演した際に、制作費の上昇を求めておられたが、

それを見ていた自分は、問題の本質をよく捉えていると感じた。

入江監督に感謝👍

 (追記)

入江監督の問題点をしっかりと認識しつつも、自らの可能性を信じている、ある意味

楽天的思考も必要ではないだろうか?